地域のために。ひとりのために。
ちょっとしたアイデアがあれば、
タクシーの可能性はもっと広がる──。
そう信じて取り組んだプロジェクトがあります。
それが〈ワインツアータクシー〉開発プロジェクト。
従来の枠にとらわれず、自由な発想で企画を立て、
そして実現のために汗をかく。そんな物語をご紹介しましょう。
〈ワインツアータクシー〉とは…
山梨県甲州市のワイナリーやフルーツ農園などをキャピタルモータースのタクシーで巡るツアー。当社営業エリアから甲州市への送迎と現地のご案内がセットになったサービスです。お客様は運転をする必要がないのでワインを楽しみながら移動できますし、荷物を車内に預けて身軽に立ち寄ることもできます。家族連れ、サークル仲間、女子会など、さまざまなグループでご利用いただいています。
田口
以前からお客様にご好評だったのが、当社の「酒蔵タクシー」でした。これは多摩地方の有名酒蔵「小澤酒造」さんとのコラボで、お客様に酒蔵見学や利き酒を楽しんでいただくために、当社タクシーが送迎をするサービスです。
鳥海
電車では駅から急坂で行きづらい場所でしたし、何よりも運転を気にせずにお酒が試飲できるためお客様にはかなり好評でしたね。メディアにも取り上げていただきましたし。
田口
この「酒蔵タクシー」のヒットを受けて社長から「他にも何かできないか」と声をかけていただいたことが〈ワインツアータクシー〉の始まりでした。
鳥海
会議などではなくて、本当にちょっとした立ち話からでしたね。いいアイデアって、堅苦しい会議ではなく、気軽なコミュニケーションの場から生まれるんだと実感しました。
田口
そんなオープンな雰囲気は、当社の魅力です。
鳥海
とはいえ最初は具体的なイメージは何もありませんでした。まず目的地ですが、軽井沢、伊豆、日光などさまざまな場所が浮かんだけれど、移動手段も充実している観光地であればわざわざタクシーで行く意味がない。
田口
だったらやっぱりお酒を楽しめるところがいいんじゃないかと、甲州市のワインを楽しむツアーはどうだろうとアイデアが浮かんだんです。
鳥海
ここから2人で本格的にプロジェクトをスタートさせました。
鳥海
とにかくまずは現地を知らなければと、甲州市まで車で行って、ワイナリーやフルーツ農園を訪ねてみました。
田口
完全にプライベートでしたね。
鳥海
やっぱり我々自身がお客様と同じ立場で体験してみないと、刺さる企画はできないでしょう。
田口
私は友人を誘って一泊二日で訪ねました。ホテルの方に「お勧めのワイナリーはどこですか」と教えてもらい、地元でも有名な“三大ワイナリー”というものがあることも初めて知りました。
鳥海
実はワイナリーツアーって、バス会社でもツアー商品があるんです。ところが現地に行ってみて驚いたのが、バスの駐車場がないワイナリーや、狭くてバスが通れない道の先にあるワイナリーが珍しくなかったことです。まさにタクシーならではの強みを活かせると感じました。
田口
実際に走ってみて「これはイケる!」って思いましたよ。どのワイナリーがどこにあるか、だいたいの土地勘もつかめましたし。ネットだけに頼っていてはいい企画は生まれないと実感しました。
田口
最初に甲州市役所に相談に行ったら、ぜひご自由に進めてくださいというお返事でした。そこで、次は〈ワインツアータクシー〉にご協力いただけるワイナリーのリストアップに取りかかりました。
鳥海
“三大ワイナリー”のような有名なワイナリーもあれば、個人で経営している小さなワイナリーもたくさんあります。先ほどもお話ししたように、素敵なワイナリーなのにバスが停められないので観光客が素通りするワイナリーもたくさんありました。そうした魅力的なワイナリーをピックアップして、ご協力をお願いしました。
田口
リストアップしたのは農園やランチなどワイナリー以外のスポットも合わせて全部で51ヵ所でしたね。皆さんとても好意的で、ぜひ〈ワインツアータクシー〉に協力したいとおっしゃってくれました。
鳥海
この51ヵ所のスポットの中から、お客様に行ってみたい場所を選んでいただけるのがサービスのカタチです。バスツアーのように決まった場所でなく、お客様ご自身で行き先を選べるのも、タクシーだからできることなんです。
田口
それにしても51ヵ所もリストアップするのは簡単じゃなかった!
鳥海
探して、連絡して、ご協力をお願いするという作業の繰り返しでした。もちろん通常の業務をやりながらです。田口さんも、午前中は運行管理の仕事をこなし、午後はリストづくりという毎日でしたね。
田口
上司はそんな私に配慮してくれて、なるべく仕事の負担がかからないようにしてくれました。思いやりが嬉しかったです。仲間に対して温かい会社ですよね。
鳥海
一番の“壁”は、運輸局への申請でした。
田口
当社の営業エリアから甲州市のワイナリーを巡って帰ってくるとすると、通常の料金では10万円以上かかってしまいます。これでは高すぎて商品にはなりません。そこで〈ワインツアータクシー〉の料金を別に決める必要がありました。ただそれには監督官庁である運輸局の許可が必要なんです。
鳥海
この申請業務が大変でした。通常とは違う料金を設定するので、それが妥当なものかどうかを論理的に示さなくてはならなかった。
田口
甲州市では中央道の勝沼インターを降りるとして、出発はどのインターから乗るのかというところから検討を始めました。東京の東のインターから乗るのと西のインターから乗るのでは当然料金も違います。それらをすべてシミュレーションし、料金を算出しました。その上でどこをどう割り引くことによって、適正な料金とすることができるかをまとめていったわけです。
鳥海
我々にとって初めてのことでしたが、運輸局にとっても“点→点”ではなく“エリア→エリア”で料金を定めるというケースは初めてだったようです。〈ワインツアータクシー〉企画に対しても好意的でしたし、前向きに受け止めてくれました。
田口
それにしても手間がかかりましたね。運賃計算の根拠について、細かく何度も説明を求められたし、申請が通るまで3ヵ月がかりでした。窓口として運輸局と交渉していた鳥海さんは、大変だったでしょう。
鳥海
許可の連絡をメールで受け取ったときはホッとしました。その後、運輸局の支局に行って許可証を受け取ったのですが、これでいよいよお客様のために〈ワインツアータクシー〉が実現できると嬉しくなりました。
鳥海
ワインツアータクシー〉の発表会は近くのイタリアンレストランで行いました。区長や議員、メディア関係者などを招待したところ、皆さん「とても面白い企画だ」と興味津々でした。
田口
高円寺のお祭りでブースを設けてチラシを配ったり、PR専門会社に依頼してネットニュースにしてもらったりといった仕掛けもしました。
田口
ポイントになったのは、乗務員への教育でしたね。自ら「やってみたい」と手を挙げた数人の乗務員を特命の〈ワインツアータクシー〉担当に任命。ワインの知識やワイナリーの情報などを勉強してもらいました。ベテランが中心でしたが、皆さん、とても前のめりに取り組んでくれました。
田口
〈ワインツアータクシー〉の告知を始めてすぐ、最初の電話が入ったのには、驚きましたね!
鳥海
「本当に来た!」と思いました。
田口
「ネットで見たんですが」ということでした。杉並区にお住まいの5人のグループで、海外駐在から帰国する仲間の歓迎イベントに、とのことでした。
鳥海
「日帰りできて、お酒が飲めて、フルーツ狩りもできるなんて、本当に魅力的な企画ですね」と喜んでくださいました。タクシーならではの魅力がちゃんと伝わったようで、嬉しかったです。
田口
社長との立ち話をきっかけに始まったプロジェクトが、こんなふうに一つの商品になったのは、当社らしいことだと思います。これから入社される方には、もっと斬新な企画を期待したいですね。
鳥海
タクシーって、ただの移動手段じゃないんです。ワインツアーのような付加価値をつけることで、まったく別の商品に生まれ変わるんですから。そんな新しいアイデア、発想がこれからも生まれることを楽しみにしています。タクシーの可能性は無限大です!