地域のために。ひとりのために。
キャピタルモータースが挑もうとしているのは、地域との新しい関わり方。タクシーを取り巻く環境が大きく変化する今こそ、実は大きなチャンスです。地域のニーズにとことん耳を傾け、既成概念にとらわれず新しいサービスを生み出していく。
経営幹部候補として、取り組みの最前に立つ若手2人と社長が、語り合いました。
磯
乗務員不足に高齢化、さらには自動運転、ライドシェアとさまざまな環境変化にさらされていると感じます。タクシー業界そのものがこの先どうなっていくのか、不透明感は高まっていく一方でしょう。基本的には逆風にさらされているのは間違いありません。
鳥海
そうした変化に抗うのではなく、その中でいかにしてお客様から選ばれる存在になっていくかという視点が必要ですね。
磯
その通り。だから私はむしろこれからの10年は、当社にとって大きなチャンスだと思っています。例えば社会の高齢化がさらに進んで、地域の人々の移動手段に対するニーズはますます高まっていくでしょう。車を持たず、自分では運転をされない層は確実に増えていきますから。そうした人たちが、毎日の買い物でスーパーへ行きたいというとき、今のタクシーのサービスで十分に応えられるかというと、決してそうではない。ニーズに的確に応える、あるいはニーズを先取りしたサービスを提供することで事業の拡大は十分可能です。我々ならば、他社に先駆けて先手を打てると確信しています。
田口
規制業界であるタクシー業界の体質はまだまだ古く、変化することを嫌います。だからこそ当社が先行者として道を拓いていけるはずです。
鳥海
「自分たちでタクシー業界を変えていくんだ」という気持ちが強くありますよね。
磯
田口くんが指摘したように業界の体質が古いのは事実。例えば「お金をかけない」ことが正しいとされ、極端に言えばボロボロの車にお客様をお乗せしても平気な顔をしていたり、距離に応じた運賃体系も昔のままです。そうした体質でもやってこられたのがタクシー業界だったけれど、今後は通用しないでしょう。既得権益を守るのではなく、地域のお客様を守るために変わっていかなくては。
田口
人材も考え方も、若返りしなくてはなりません。若い世代がもっとワクワクできる、そんな業界にしていきたいと思います。
鳥海
もちろんです。私が入社した約10年前、事務所にはパソコンが1台しかありませんでした。スマホが普及し始めていた頃で、「今って2012年だよね」と衝撃を受けたのを覚えています。まさかパソコン1台で事務所の仕事をこなしているとは思いもよりませんでした。ところが実際にその1台でそれなりに仕事は回っていたんです。それにはもっと驚きました。
田口
紙とペンで済む業界だったんです。100人の乗務員がいたら、連絡事項を紙に手書きして100枚コピーすればよかった。昭和のそんなやり方が通用していたわけです。もちろん伝達事項があるなら社内SNSを利用すれば、ずっと速く正確に伝えられます。けれど設備に「お金をかけない」ことが正解だったから、新しい技術の導入も進みませんでした。
鳥海
それでも私たちがずっと働きかけることで、ITの整備も進み、今ではリモートで打ち合わせが当たり前にできるようになりました。事務所でも1人1台のパソコンが支給されています。変わらなきゃという問題意識は、確実に形になってきています。
田口
それでもまだまだ課題なのは乗務員のみなさんの意識改革ですね。「今のままで問題ないのに、どうして変えなきゃいけないんだ」と思っている人が残念ながら少なくない。
鳥海
そこを変えるのはとても大変なんです。一人ひとりの意識を変えていくしかありませんから。
田口
地道にコミュニケーションを取り続けていく以外にないですよね、確かに。
鳥海
例えば車載タブレットにも当初は抵抗がありました。それは“慣れ”の問題なんです。そこで私は乗務員のスマホの使い方の相談にも乗りました。それこそ初期設定から一緒にやったんです。そうすることでデジタル機器に対するアレルギーが少しでも消えていったら、と。
田口
オリジナルのマニュアルもつくりましたね。メーカーが用意したマニュアルじゃダメなんです。例えば「メニューボタンを押してください」と書いてあっても、年配の乗務員にとってはどれがメニューボタンなのかがわかりづらい。だから「右上の横3本線を押す」という具合に、徹底的に乗務員目線でつくりました。自分が入社後に乗務員を務めたときの経験が役立っています。
鳥海
最近は乗務員からの問い合わせも増えましたね。機器に興味を持ち、使おうとしてくれているから問い合わせも増えてきたと感じます。
磯
鳥海君、田口君という若い世代が頑張っている背中を見ているから、みんなの意識も徐々に変わってきたんでしょう。確実に社内の“風”が変わってきたと思います。
鳥海
私が入社したのも、磯さんのリーダーシップに惹かれたためです。
田口
周囲をワクワクさせてくれる人ですよね。「これから一緒に会社を変え、業界を変えてほしい」とのメッセージに惹かれて、入社しました。
磯
2人とも大卒の新卒社員ということで期待はしていたんですが、正直言うと、古い体質の会社で心が折れないかと心配もありました。
鳥海
自分の父親のようなベテランが多いことは確かですが、いじられ慣れているので、案外平気でしたよ。
田口
社長自身も矢継ぎ早に改革の手を打ってこられたんですよね。日本交通グループ入りもその一手ですよね。
磯
日本交通は東京最大手のタクシー会社で、信用力もブランド力も随一です。そのグループの一員になることで、我々も襟を正し、誇りを持って仕事に打ち込めるようになりたいと思いました。また賃金体系も大幅に変えました。目立たなくても誠実に頑張っている乗務員に、しっかり報いるようにしたわけです。
鳥海
変化が感じられると、仕事も楽しくなりますよね。大変な面も多いけれど、“一難去ってまた一難”が面白いというか、壁があるからこそやる気が出る。
田口
私は「なせばなる理論」でやってます。自分がやらなきゃ結果は出ないし、やってみれば必ず何らかの結果はついてくるんです。人任せにせず、まずは自分から動くことにはこだわりたいですね。
磯
地域の課題と真正面から向き合い、ニーズを見つけ出して、一つひとつ誠実にお応えしていくことが基本です。この姿勢は決してブレることがありません。
鳥海
私自身、この杉並という街について、まだ0.1%ぐらいしか知らないのではと実感があります。タクシー会社は外に目を向けることをあまりしてこなかったので、これからは地域を知ることを徹底したいと考えています。
磯
地域をくまなく見ていくと、鉄道もバスもない、いわゆる交通不便地域が随所にあることがわかります。こういう地域の人たちのために、我々には何ができるかを考えたい。さらには医療や教育、消費といった地域の日常生活に不可欠な機能と、タクシーの“移動”という機能を組み合わせることで新しい価値を提供できるのではないかとも考えています。とことん地域の幸せを追求していく、そんな会社になりたいんです。
田口
そうした取り組みを進めていくためにも、これから入社される皆さんに原動力になってほしいんです。一人でも多くの方が共感してくれ、エンジンになってくれたら嬉しいですね。
磯
仕事って、人生の中で非常に長い時間、携わるものじゃないですか。だからやっぱり楽しめないと続けるのは難しいと思う。では楽しみとは何かというと、人が喜んでくれ、感謝してくれることだと思います。それが地元の人であればなおのことでしょう。これから当社がどんな取り組みを打ち出していくか、まだ決まっていません。だからこそ自由に進めていけるんです。ぜひこれから入社される皆さんも含め、若い世代には、夢中になって取り組んでほしいですね。